遺族の挨拶のポイント
しっかりとした態度で臨みます
 通夜は、弔辞の中で最初に行われる儀式です。遺族にとってみれば、身内の者が死亡してから、まだあまり時間がたっていないわけですから、悲しみやつらさはひとしおでしょう。
心の乱れがあるかもしれませんが、弔問客に対しては、しっかりとした態度をとり、きちんとした挨拶をしなくてはなりません。
感謝とお礼の気持ちを忘れずにいましょう
 自然な形で弔問のお礼を言います。
「お忙しい中を、急にお越しいただきありがとうございます。」
「おくやみくださいまして、まことに恐れ入ります。」など、型通りの言葉でかまいません。
さらに、死に至った状況を簡単に説明して、弔問への感謝の気持ちを述べ、お礼の言葉でしめくくります。
読経後に簡単な挨拶をします
 僧侶の読経後、酒宴のもてなしを行います。これは、故人をみんなでしのぶためのものです。このときに遺族は簡単な挨拶をします。
「故人の供養のため、ささやかではございますが、心ばかりのものを用意させていただきました。故人をしのびながら召し上がっていただけたらと存じます。」といった言葉をつけ加えるとよいでしょう。
その後、予定の時間がきたら通夜の終わりを告げて、帰っていく弔問客に最後の挨拶をします。
遺族の挨拶の例
故人の息子の場合
 本日はお忙しいところをご弔問くださいまして、まことにありがとうございました。私は長男の○○でございます。父に代わりまして、厚くお礼申し上げます。
 父は、昨日○日、午後○時○分、私ども家族の見守る中で静かに息を引き取りました。享年○○歳でございました。これまで大きな病気をしたこともなく、ずっと健康ですごせたことが何よりの幸せであったと、かねてから自分でも申しておりましたが、臨終に際しても眠るような穏やかな最後でございました。
 思えば、在職中はいわゆるモーレツ社員で、残業、出張も多く、遺書に遊んでもらった思い出などもあまりございません。休日であっても電話一本で会社へ行ってしまうことも良くありました。定年を迎えて退職してからは、私を相手に晩酌をするのを楽しみにするようになり、休日ともなれば孫たちを連れて釣りに出かけたりと、家族とのふれあいをそれは大切にしておりました。どのどちらも、私にとって尊敬できる父の姿でした。
 本日は、ささやかではございますが、別室に食事の席を用意いたしました。いつもは私と二人の晩酌でしたが、今夜は皆様と一献かたむけたいと父が申しているような気がしております。お時間が許すかぎり、どうぞごゆっくりお過ごしくださいますようお願いいたします。
故人の娘の場合
 長女の○○でございます。本日はご多忙の中、母○○の通夜においでくださいまして、まことにありがとうございます。
 母は去る△日、午前△時△分、○○病院におきまして、永眠いたしました。享年○歳でございました。入院いたしましたのが、ちょうど一年前の△月。突然倒れて検査をいたしましたところ、膵臓にガンがあるとのこと。長くても後半年という医師の言葉を、信じられない気持で聞いたのが、つい昨日のことのようでございます。母には告げることが出来ず、私どもも奇跡を祈って今日まで過ごしてまいりましたが、それもついにかないませんでした。ただ、半年と言われた寿命が一年に延び、少しでも母と過ごせる日を長くもてたことが、今となってはせめてもの慰めとなっております。
 生前、たくさんの方にお見舞いをいただき、皆様の温かいお心遣いに、母は大変励まされておりました。本日はあちらの部屋に、お食事の用意をさせていただきました。私どもからの、そして母からのささやかではございますがお礼の気持でございます。ひととき、ごゆっくりおすごしいただければと存じます。
故人の夫の場合
 本日はお寒いなか、妻○○の通夜においでいただきまして、まことにありがとうございました。
交通事故などというものは、他人事のように思っておりましたが、こうして妻を事故で亡くしてみますと、身近なところにも危険は潜んでいるのだと、今さらながら考えずにはいられません。成人前の子供たちを遺し、妻もさぞ心残りであっただろうと思います。
 ただ、いつも物事を前向きに考えるのが、妻の良いところであったと私は思っております。その妻の気持ちの報いるためにも、遺った家族がこれまで以上に心を合わせ、新しい生活に向かって歩んでゆきたいと考えております。
 つきましては、何かと行き届かぬ事もあるかと存じますが、妻亡き後も、これまで同様、皆様のご助力ご厚情をいただければとお願いする次第でございます。
 ささやかではございますが、本日はお食事の用意をさせていただきました。どうぞ、お召し上がりいただきながら、故人を偲んでやってください。どうもありがとうございました。
故人の妻の場合
 本日はお忙しいところ、亡き夫の○○のためにていねいなご弔問をいただきまして、まことにありがとうございました。こんなにたくさんの皆様にお越しくださいまして、故人もさぞかし喜んでいることと存じます。
 日頃健康だった夫が思いがけず病に倒れましてから、亡くなるまではたったの四ヶ月でございました。その間、皆様からは心のこもったお見舞いをいただき、夫もそれを何よりの励みとしておりました。残念ながらこのような結果となってしまいましたが、夫は夫なりに悔いのない人生を生きたと、今は考えてやりとうございます。
 とは申しますものの、やはりまだ気持がまとまりません。きちんとしたご挨拶が出来ず恐縮ですが、これで失礼させていただきます。あちらに簡単なお食事の用意が出来ておりますので、召し上がっていただきながら、故人と最後のひとときをお過ごしいただければと存じます。
故人の親の場合
 本日はあいにくのお天気でございますのに、娘○○のためにご弔問においでいただき、ありがとうございました。
 何しろ突然のことで、私どももまだ混乱しているというのが実際のところでございます。楽しいはずの旅先で交通事故に遭うなどと、誰が想像しましたでしょう。翌日は日本に帰るというその日に、娘の乗ったバスが転落事故を起こしたのだそうでございます。オーストラリアという遠い国でのことゆえ、すぐには駆けつけることも出来ず、何もしてやれなかったのが心残りでございました。ただ、最後に立ち会えなかった私どもは、何より旅の好きだった○○は、今もどこかを旅しているんじゃないか、そんな気がいたしております。もしかして、ひょこっと元気に帰ってくるのではないかなどと思ってみたりもいたしますのは、やはり未練でございましょうか。
 お聞き苦しいことを申し上げ失礼いたしました。私どもも、一刻も早くこの悲しみから立ち直り、娘の冥福を祈ってやりたいと思っております。今となりましては、それが娘にとって何よりの供養となることでございましょう。
 ささやかではございますが、本日はあちらにお食事の席を設けております。召し上がりながら、どうか故人を偲ぶお話などお聞かせいただければと存じます。本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。
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